初めて年金事務所へ障害年金の相談に行く方へ — 聞かれること・聞くべきこと・持ち物と予約方法。「相談前に初診日を固めておく」理由

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障害年金の申請は、「年金事務所に相談に行く」ところから始まります。ところがこの最初の一歩が、想像以上に重い。

どれも当然の不安です。この記事は、その最初の一歩を「準備された訪問」に変えるためのものです。聞かれることは決まっています。持っていくものも決まっています。そして——これが一番大切なのですが——行く前にやっておくべきことがあります

年金事務所は何をしてくれる場所か(そして、何をしてくれないか)

期待値を最初に合わせておきましょう。年金事務所でできることは、主に4つです。

一方、やってくれないこともはっきりしています。

つまり年金事務所は「要件と書類の窓口」であって、「受給できるかを決める場所」でも「書類の質を上げてくれる場所」でもありません。この線引きを知っておくと、期待外れも過度な落胆もなくなります。

予約方法 — 「思い立ってすぐ行ける」場所ではない

年金事務所の相談は原則予約制です。方法は2つ。

(1) インターネット予約。 年金の請求に関する手続き(障害年金を含む)は、ネットからの予約に対応しています。基礎年金番号とメールアドレスが必要です。日中に電話しづらい人、電話そのものが苦手な人にはこちらが向いています。

(2) 予約受付専用電話。 予約専用のダイヤル(0570-05-4890)に電話します。基礎年金番号が分かるもの(基礎年金番号通知書・年金手帳など)を手元に用意してからかけてください。

そして重要なのが、予約が取れるのは1〜2週間先が普通、混雑する地域では1〜2か月先になることもあるという点です。「書類が揃ったら行こう」ではなく、まだ何も揃っていない段階で先に予約を入れておくのが正解です。予約日までの期間が、そのまま準備期間になります。

窓口の対応時間は平日の日中が基本で、月に何度か土曜開所や延長開所の日があります。体調に波がある人は、自分の調子が比較的いい時間帯(朝が苦手なら午後)を指定してください。

【最重要】相談前に、初診日を自分で固めておく

ここが、この記事でいちばん伝えたいことです。

障害年金のすべては初診日から始まります。初診日によって、受け取れる年金の種類(障害基礎年金か障害厚生年金か)も、納付要件の判定も、障害認定日も決まります。

そして実務でよく指摘されるのが、年金事務所で相談したときに伝えた内容は記録として残るという点です。相談時に伝えた初診日と、後日の請求で主張する初診日が食い違うと、その理由をきちんと説明できなければ手続きがこじれることがあります。

だから、行く前にできる範囲で固めておきます。

大事なのは、分からないことを「分からない」と正確に伝えることです。曖昧なまま断定して伝えるのが一番よくありません。「たぶん平成28年ごろですが、確認中です」は、まったく問題のない答え方です。

精神疾患は、初診が古く特定が難しいケースが少なくありません。実務者の発信でも、初診日が古い統合失調症などでは医療機関同士の紹介書類から初診日を確定できた例が多いと語られています。相談時点で確定していなくても構いません。「確定していない」という事実を正確に共有することが、後々の食い違いを防ぎます。

窓口で必ず聞かれる5つのこと

準備の目安として、聞かれることを先に挙げておきます。

  1. 初診日はいつ、どこの病院か — 上記のとおり最重要。分かる範囲+不明部分の申告
  2. 傷病名は何か — 現在の診断名。変遷があれば「最初は◯◯、現在は△△」と
  3. 現在の通院状況 — どの病院に、どのくらいの頻度で通っているか
  4. 現在の就労・生活の状況 — 働いているか、休職中か、日常生活で何に困っているか
  5. 家族構成 — 配偶者や18歳未満の子がいるか(加算の対象になります)

このほか、基礎年金番号・住所・連絡先といった事務的な確認があります。説明が苦手でも大丈夫です。上の5つをメモに書いて持っていき、必要なら紙を見せてください。実際、窓口で言葉に詰まる人はたくさんいます。

こちらから聞くべき7つの質問

受け身で行くと、様式をもらって終わってしまいます。次の7つを持っていってください。これが今回の訪問の「成果物」になります。

  1. 保険料納付要件は満たしていますか? — 最重要。ここがクリアできていなければ、他の準備をしても請求できません(→納付要件)
  2. 私の初診日だと、障害基礎年金と障害厚生年金のどちらになりますか? — 3級の有無や年金額が変わります
  3. 障害認定日はいつになりますか? — 原則は初診日から1年6か月後。ここを起点に認定日請求か事後重症請求かが決まります
  4. 私のケースで必要な書類を全部教えてください — 診断書は何枚必要か(認定日請求なら2枚)、受診状況等証明書は必要か、戸籍や住民票は要るか
  5. 受診状況等証明書は、どの病院に頼めばいいですか? — 初診の病院と現在の病院が同じなら不要です
  6. 提出先はここでいいですか? — 障害基礎年金は市区町村でも受け付けます
  7. 書類が揃ったら、また予約が必要ですか? — 提出の段取りを最初に確認しておくと、後で慌てません

この7つの答えをメモして帰れば、その日の相談は大成功です。特に1・3・4が揃えば、そこから先の作業(病院への依頼)にすぐ入れます。

当日、うまく話せなくても大丈夫にしておく

相談当日にいちばん多い失敗は、「緊張して、聞きたかったことを聞けずに帰ってきた」です。精神疾患を抱えていれば、知らない場所で知らない人と制度の話をするだけで消耗します。対策を並べておきます。

紙を渡してしまう。 後述の相談カードを、そのまま職員に見せて構いません。「うまく説明できないので、これを見ていただけますか」で通じます。窓口はそういう対応に慣れています。

録音より、メモの代筆を頼む。 録音の可否は施設によるので、代わりに「答えを書いていただけますか」と頼むか、家族に同席してもらって書き役になってもらいます。

同席者を連れて行く。 家族、支援員、友人。誰でも構いません。同席そのものに手続き上の制限はなく(本人確認は本人が行います)、聞き漏らしが激減します。

当日の体調が悪ければ、迷わず予約を変更する。 無理に行って何も持ち帰れないより、日を改めたほうが結果的に早く進みます。予約の変更は電話一本でできます。

質問は「はい/いいえ」で答えられる形にする。 「私は受給できますか」という漠然とした質問は、窓口も答えようがありません。「納付要件は満たしていますか」「認定日は◯年◯月で合っていますか」と、答えが一義に決まる形に変えると、持ち帰れる情報が増えます。

相談でよくある勘違い5つ

窓口で「そうだったのか」となりやすいポイントを、先回りして潰しておきます。

勘違い1:「障害者手帳がないと申請できない」 — できます。手帳と年金は別制度・別審査で、手帳は要件ではありません。手帳2級でも年金が不支給になることも、手帳3級で年金2級になることもあります。

勘違い2:「働いていたら相談する資格がない」 — ありません。就労と受給の両立は制度上正当で、実際に働きながら受給している人は大勢います。相談時には、働き方(障害者雇用か、勤務時間、配慮の内容)を具体的に伝えてください。

勘違い3:「窓口が受給の可否を判定してくれる」 — しません。判定するのは審査機関です。窓口でできるのは要件の確認までです。

勘違い4:「相談に行ったら申請することになる」 — なりません。要件を確認して帰るだけでも構いませんし、いったん持ち帰って考える人がほとんどです。

勘違い5:「1回の相談で全部終わる」 — 終わりません。要件確認→書類集め(2〜3か月)→提出、が標準の流れです(申請から結果までの期間)。1回で完結しないことを知っておくと、焦らずに済みます。

完成形:アキさんの「相談カード」

アキさん(32歳・うつ病、実家で母と2人暮らし)が、初回相談に持って行ったA4一枚のメモです。持ち物リストと、伝える内容と、聞くことが1枚になっています。

【持ち物】 □ 年金手帳または基礎年金番号通知書 □ マイナンバーカード(または通知カード+運転免許証など) □ 印鑑(認印。不要な場合もあるが念のため) □ お薬手帳・診察券(初診の確認用) □ このメモ □ 筆記用具(答えを書き取るため)

【私の状況】 ・氏名/生年月日/基礎年金番号:(記入済み) ・傷病名:うつ病(2019年7月「うつ状態」で初診、2022年に「うつ病」の診断) ・初診:2019年7月ごろ・Aクリニック(領収書あり。正確な日付は確認中) ・その後:2020年3月まで通院→中断→2022年1月からBメンタルクリニック(現在も通院・月1回) ・就労:2023年8月に退職。現在無職・求職活動なし ・生活:実家で母と2人。食事・服薬・金銭管理は母の援助が必要 ・家族:配偶者なし・子なし

【聞くこと】(答えを右に書く)

  1. 納付要件は満たしている?→
  2. 障害基礎年金/障害厚生年金のどちら?→
  3. 障害認定日はいつ?→
  4. 必要書類の一覧(診断書は何枚?)→
  5. 受診状況等証明書はA・Bどちらに頼む?→
  6. 提出先はここ?市役所?→
  7. 提出時も予約が必要?→

このカードの効果は2つあります。話すのが苦手でも、紙を見せれば伝わること。そして、帰宅後に「何を聞いたか」が残ることです。相談中は緊張していて、聞いたことを覚えていられません。答えを書き取る欄まで作っておくのがコツです。

「あなたは無理ですよ」と言われたら

窓口の職員から、受給の可能性について否定的な見立てを言われることがあります。「働いているなら難しいですね」「その病名だと厳しいかも」といった言葉です。

ここで覚えておいてください。窓口の職員は審査官ではありません。受給できるかどうかを決めるのは、提出された書類を審査する障害年金センターです。窓口の見立ては、あくまで一般論としての印象です。

実際、実務の世界では、窓口や他の専門家に「難しい」と言われたケースが受給に至る例が普通にあります。困難案件を扱う専門社労士が「他の社労士や年金事務所で受給できないと言われた方」を対象に受給判定を案内しているくらいで、それは窓口の見立てと審査の結果が一致しない場面が現実にあることの裏返しです。フルタイム勤務6年で受給した事例、どの病院にも診断書を断られた状態から受給に至った事例——いずれも「無理そう」の先にあった結果です。

もちろん、要件を満たしていない(納付要件がクリアできていないなど)という指摘は事実として受け止める必要があります。「制度上の要件の話」と「見立ての話」を切り分ける——これが窓口で否定的なことを言われたときの正しい受け止め方です。要件の話なら詳細を確認し、見立ての話なら「書類を揃えて審査に出す」判断を自分で持ってください。

行けない・行きたくないときの選択肢

体調的に、あるいは心理的に、窓口に行くのが難しい人へ。

(1) 家族だけで行く。 障害年金の相談や手続きは、本人以外の第三者が行っても制度上まったく問題ありません。実務に詳しい発信者も明言していることで、専門家への相談も家族からのものが一定割合を占めます。年金事務所での正式な手続き(記録の照会など個人情報にかかわるもの)には委任状が必要になるので、本人が署名した委任状を用意していきます(様式は日本年金機構のサイトにあります)。

(2) 電話・文書・FAXでの相談。 やむを得ない理由で来訪が難しい場合、文書やFAXでの相談を受け付ける仕組みがあります。一般的な制度の照会は「ねんきんダイヤル」でも可能です。

(3) 出張相談を利用する。 地域によっては、年金事務所が出張相談を行っている場合があります。近くの会場のほうが移動の負担が小さいこともあるので、確認する価値があります。

(4) 社労士に相談する。 初回相談を無料にしている事務所が多く、「自分は受給できそうか」の見通しだけ聞くという使い方ができます。依頼するかどうかは、その後で判断すれば構いません(自分で申請するか社労士に頼むか)。

(5) 医療機関の相談室(精神保健福祉士)に相談する。 通院先に相談室があれば、制度の入口の相談ができ、主治医への橋渡しもしてもらえます。移動の負担がゼロなのが最大の利点です。

年金事務所「以外」の相談先も知っておく

年金事務所は要件と書類の窓口です。それ以外の悩み——「そもそも自分は対象なのか」「診断書を書いてもらえない」「書類が書けない」——には、別の窓口が向いています。使い分けの地図を置いておきます。

制度の要件・書類のこと → 年金事務所、市区町村の年金担当窓口

受給の見込み、書類の作り方、困難ケース → 社会保険労務士。初回相談を無料にしている事務所が多く、「受給できそうかの見通しだけ聞く」使い方ができます。障害年金を専門にしている事務所は、初診日が不明・主治医の協力が得られないといった難案件の実績を公表していることがあるので、依頼を検討するならそこを見て選んでください(→自分で申請?社労士に依頼?)

主治医への切り出し方、院内の調整 → 通院先の相談室(精神保健福祉士・ソーシャルワーカー)。移動の負担がゼロで、医師への橋渡しがいちばんスムーズです

働きながらの申請、職場の配慮の整理 → 就労移行支援・就労定着支援・障害者就業/生活支援センターの支援員

生活費や他制度(自立支援医療・保険料の減免など) → 市区町村の障害福祉窓口

大事なのは、すべてを年金事務所に期待しないことです。窓口の職員は制度の専門家であって、あなたの病状や書類の質を良くする役割は担っていません。役割ごとに相談先を分ければ、「相談したのに何も進まなかった」という徒労が減ります。

「相談してみたけど、やっぱり無理そう」で止まらないために

初回相談の後、そのまま止まってしまう人は少なくありません。理由はだいたい次のどれかです。

どれも自然な反応です。ただ、止まっている間にも時間は動いています。事後重症請求なら、提出が1か月遅れれば1か月分の年金が失われます。認定日から5年以上経っている人なら、遡及できる過去分が毎月消えていきます(申請から結果までの期間)。

止まらないためのコツは、次の一手を1つだけ決めて帰ることです。「初診の病院に電話する」「次の診察で先生に予告する」——それだけでいい。全部を一度に片付けようとするから動けなくなるので、相談カードの余白に「次にやること:◯◯」と1行書いて帰ってください。

そして、体調が理由で止まりそうなときは、家族や支援者に「この1手だけ代わりにやってもらえないか」と頼んでください。手続きを第三者が行うことは制度上まったく問題ありません。1人で完走する必要はない制度です。

相談から帰ったら — 次にやる3つのこと

相談は入口であって、本番はここからです。帰宅後にやることを順番で書いておきます。

(1) 聞いてきた答えを清書する。 特に「認定日」と「必要書類」。この2つが、以降のすべてのスケジュールの基準になります。

(2) 病院への依頼を始める。 初診の病院に受診状況等証明書を、現在の主治医に診断書を。ただし診断書には依頼のタイミングがあるので、診断書の依頼タイミングの記事を先に読んでください。順番を間違えると、書き直しになることがあります。

(3) 生活の実態の記録を始める。 これが、この記事で最後に伝えたいことです。年金事務所は要件と書類の窓口であって、書類の中身の質までは面倒を見てくれません。そして審査の結果を分けるのは、まさにその中身——診断書に生活の実態が反映されているかどうかです。

日々の出来事を短くメモすると、診察で医師に渡す7項目に沿った資料と、申立書の下書きに整理されるアプリを作りました。予約日までの1〜2週間、次の診察までの日々——待ち時間はすべて、記録を貯める時間に変えられます。ログイン不要・記録は端末の中に保存され、基本機能は無料です。

よくある質問(FAQ)

Q. 予約なしで行っても相談できますか? A. 原則は予約制です。予約なしでも受け付けてもらえる場合がありますが、待ち時間が長くなったり、担当者が対応できずに出直しになったりすることがあります。体調に負担をかけないためにも、予約を取ってから行くことをおすすめします。

Q. 予約はどのくらい先まで埋まっていますか? A. 一般的には1〜2週間先、混雑する地域では1〜2か月先になることもあります。書類が揃ってから予約するのではなく、準備を始める段階で先に予約を入れておくのが効率的です。

Q. 初診日が分からないまま相談に行ってもいいですか? A. 構いません。ただし、分からないことを断定して伝えるのは避けてください。相談で伝えた内容は記録に残るため、後の請求で主張する初診日と食い違うと説明が必要になります。「◯年ごろですが確認中です」と正確に伝えるのが最善です。

Q. 家族だけで相談に行けますか? A. 行けます。障害年金の相談や手続きを本人以外が行うことは制度上問題ありません。年金記録の照会など個人情報に関わる手続きには、本人が作成した委任状が必要です。

Q. 窓口で「受給は難しい」と言われました。諦めるべきですか? A. 窓口は審査機関ではないため、その言葉は最終判断ではありません。ただし「保険料納付要件を満たしていない」など制度上の要件に関する指摘は事実として重要です。要件の話か見立ての話かを切り分け、要件が満たせているなら書類を揃えて審査を受ける判断ができます。

Q. 相談は何回くらい行くことになりますか? A. 一般的には、初回の相談(要件確認と書類の受け取り)と、書類が揃った後の提出で最低2回です。書類の不足や初診日の確認で追加の来訪が生じることもあります。提出時にも予約が必要かどうか、初回に確認しておくと無駄足を防げます。

Q. 提出先は年金事務所と市役所のどちらですか? A. 初診日にどの制度に加入していたかで変わります。障害厚生年金(初診日が厚生年金加入中)は年金事務所、障害基礎年金(初診日が国民年金)は市区町村の窓口または年金事務所です。迷ったら年金事務所に確認してください。

まとめ

※本記事は一般的な情報提供であり、受給の可否を保証するものではありません。予約方法・受付時間・必要書類の最新情報は、日本年金機構のホームページおよびお近くの年金事務所でご確認ください。

参考リンク

制度の正式な情報・最新の様式は、日本年金機構のホームページおよび 年金事務所でご確認ください。